コラム『非特異的腰痛』
2019年国民生活基礎調査によると病気やけが等で自覚症状のある者(有訴者)は人口千人当たり 302.5人(この割合を「有訴者率」という。)となっており、症状別にみると、男性では「腰痛」での有訴者率が最も高く、女性では「肩こり」が最も高く、次いで「腰痛」となっています。1)
このように、腰痛は男女ともにごく一般的なものと言えるのではないでしょうか?
この腰痛ですが、レントゲン検査などの画像検査で器質的な変化(骨の変形など)を認め、その病態が明らかとなる腰痛は約15%程度とされ、残りの約85%は画像検査では何ら異常が認められない「非特異的腰痛」と呼ばれています。2)画像検査で異常はなくとも実際に腰痛はあります。これはどういうことなのでしょうか?
非特異的腰痛とは
画像検査では異常が認められず、病態が明らかとされない腰痛を”非特異的腰痛”といいます。安静や投薬といった対処で症状が軽減しますが、日常生活動作や仕事などで脊柱へ負担がかかることによって再発してしまいます。これは脊柱への負荷に対して脊柱の機能が十分に対応ができていない、つまり機能的な傷害による腰痛とされています。2)
機能的な問題とは
例えば、前屈する際には腰椎、骨盤、股関節が適正なリズムをもって協調した屈曲運動が重要です。太ももの後ろのハムストリングの柔軟性が低下すると前屈時には股関節の運動が制限され、下位腰椎部に局所的な屈曲運動が生じ、そこの椎間板に障害を引き起こすとされています。2)
また、脊柱を安定させるために腹横筋、内腹斜筋などの体幹深層筋群がタイミング的に遅延が生じていたり、あるいは筋力的に不十分であると、脊柱起立筋などの体幹浅層筋群へ過度な負担が生じ、その結果その過重な負担が加わった筋肉が損傷することによって腰痛を発症するとされています。2)
上記に挙げた2つの機能的な問題は、レントゲンなどの画像検査ではなく、実際に動作を確認したり、筋の柔軟性を確認したりすることによって評価することが必要となります。
非特異的腰痛に対するエクササイズ
非特異的腰痛の機能的な問題に対する予防対策として、自宅でもできる簡単なエクササイズを2つご紹介します。
ドローイン
〈方法〉
1.仰向けになり、両膝を立てます。
2.両手をおへその上に置きます。
3.リラックスした状態で鼻から息をゆっくり吸い、お腹が膨らむのを感じます。
4.口をすぼめて、細く長く息をゆっくり吐きながらおへそを引き込んでいきます。
5.お腹に力が入ったのを確認したら3~5秒ほどキープします。
6.再びリラックスし、ゆっくり息を吸い込みます。(3~5を繰り返します)
〈回数〉
ゆっくり呼吸と合わせて10~20回
ハムストリングストレッチ
〈方法〉
1.イスなどに浅く腰掛けます。
2.片脚の膝をまっすぐ前方に伸ばします。
3.両手は曲げている膝の上に置き、背筋を伸ばします。
4.背中が丸まらないようにゆっくりと上半身を前方に倒していきます。
5.太ももの後ろから膝裏にかけてがストレッチされます。
〈時間〉
反動をつけずに5.の状態で約30秒保持
まとめ
腰痛は今回ご紹介した内容以外にも多くの要因が関与していると可能性があります。腰痛になってしまった場合は安易に自己判断せず、まずは医療機関を受診し、専門家の指導を仰ぐことをおすすめします。
メディカルフィットネスM’sでは個々に合わせた個別運動プログラムや上記のような内容を学びながら運動を中心とした対策を少人数グループで実践するグループセッションなど、腰痛でお悩みの方にも運動を通じたアプローチをご提案しております。
・グループセッション「腰痛予防」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
〈参考文献〉
1)厚生労働省.2019年 国民生活基礎調査の概況.厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html.(参照2021-7-14)
2)金岡恒治,大久保雄,成田崇矢,太田恵,今井厚.腰痛の病態別運動療法 体幹機能向上プログラム.文光堂.2016.p14-28
(文/辻)