冬になると気分が落ち込む「季節性感情障害」について解説します
いよいよ2025年が始まりました。年が明け、寒さが深まってきています。
「冬になると気分が憂鬱になる」
「寝ても寝ても疲れが取れない気がする」
「いつもより甘いものが食べたくて仕方がなくなる」
冬の時期にこんな症状が気になる方は、もしかしたら季節性感情障害(SAD)かもしれません。今日は冬季うつ病、ウインター・ブルーなどと呼ばれることもあるこのSADについてお話していきます。
季節性感情障害(SAD)の症状
季節性感情障害(以下SAD)とはその名の通り、晩秋から冬にかけて症状が現れる季節性の抑うつ気分のことです。
・何があったわけでもないのに憂鬱で悲しい気持ちになってしまう
・物事に興味が湧かなくなる
・寝すぎてしまう、寝ても疲れが取れない
・食欲が増えて食べすぎてしまう
・集中力が低下し、パフォーマンスが落ちる
など、「食欲不振」「不眠」「体重減少」に陥ることが多い一般的なうつ病とは症状の一部に大きな違いがあります。
SADの原因
SADの原因は実はまだ明確に解明されていませんが、有力な説として日照時間の減少による以下の要因が関係していると考えられています。
①ホルモンの分泌量の変化
感情の安定や精神を整える、「幸せホルモン」と呼ばれることもある神経伝達物質の「セロトニン」は日光を浴びることで分泌が促進されます。そしてそのセロトニンを原料に睡眠・覚醒のリズムを整えるホルモン「メラトニン」が生成されます。つまり、
・日照時間の減少により、セロトニンの分泌が減る
↓
・不安になったり精神のバランスが崩れる & 合成できるメラトニンの量が少なくなり、睡眠のバランスも崩れ、SADの症状が現れる
と考えられます。
②ビタミンDの不足
また、ビタミンD不足もSADに関連があると言われています。
日光を浴びることで体内で生成されるビタミンDですが、冬は日照時間が短くなるためビタミンDの生成が減少します。そしてこのビタミンDは上で述べた「幸せホルモン」であるセロトニンの分泌に関与しているため、ざっくりまとめると、日照時間が減少すると体内のビタミンDレベルが低下し、その結果セロトニンの分泌量が減るということになります。
SADの対策法
上記を踏まえたうえで、SADの対策方法を考えていきましょう。
①日光を浴びる
まずは手っ取り早く、意識的に日の光を浴びることがひとつです。実際に睡眠障害やうつ病の治療として光照射療法というものもあるくらいですから、もう既にお話はしましたが太陽光(やそれと同等の光)の重要性はご理解いただけると思います。まずは朝起きたら日の光を浴びる、そして日中も太陽が出ているときは積極的に日光を浴びるようにしてみましょう。
②運動する
運動がうつ病などの気分障害に効果があるというのは多くの報告で確認されています。運動すると気持ちがすっきりして元気が出る…と感じる人は多いはずです。これは運動によってセロトニンの生成量が増えることが一つのメカニズムとして考えられています。また、運動をすると当然疲労するので、回復のために身体がおのずと睡眠を求めるため睡眠の質の改善も期待できます。
③「幸せホルモン」を増やすための材料を摂る
SADに関連のあるセロトニンや睡眠に関わるメラトニンを増やすためには「トリプトファン」というアミノ酸が必要です。トリプトファンは体内では合成されない必須アミノ酸のため、食事からの補給がマストになります。アミノ酸の一種であるトリプトファンはタンパク質を含む食材から摂取が可能です。
・チーズ、牛乳などの乳製品
・豆腐、納豆、味噌などの大豆製品
・米などの穀類
・ピーナッツなどのナッツ類
などはトリプトファンが多く含まれています。そしてトリプトファンからセロトニンやメラトニンへの合成をスムーズにするために必須なのがビタミンB6なので、それらが豊富に含まれる鶏肉や魚介類(まぐろ、さば、さんまなど)を一緒に摂ることもおすすめです。
最後に
季節性の気分障害であるSADについて、原因とその対策法についてお話させて頂きました。ただし、今回のような症状があるからといって必ずしもSADであるとも限りません。
季節性のストレス(例:繁忙期で生活習慣が乱れる)による一過性の症状かもしれませんし、別の疾患が関わっている可能性もあります。日常生活や社会生活に支障が出るまでの深刻な状況になっている場合は、迷わず専門の医療機関で受診をしてくださいね。
(文/坂内悠)
参照:
Galima S. L., Vogel S. R., and Kowalski A. W. (2020). Seasonal Affective Disorder: Common Questions and Answers. https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2020/1201/p668.html
Mayo Clinic. Seasonal Affective Disorder(SAD).https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/seasonal-affective-disorder/symptoms-causes/syc-20364651
National Institute of Mental Health. Seasonal Affective Disorder.https://www.nimh.nih.gov/health/publications/seasonal-affective-disorder
Ohmatsu S et al. (2014). Activation of the Serotonergic System by Pedaling Exercise Changes Anterior Cingulate Cortex Activity and Improves Negative Emotion. Behavioural Brain Research.