骨粗鬆症の予防には…?
「骨粗鬆症」とは、骨の量が減り、質も劣化し、骨の強度が低下することで骨折しやすくなった状態です。日常の軽い衝撃が加わるだけで、様々な部位の骨折を起こしやすくなります。高齢になると骨折により、寝たきりや介護が必要になること、さらには寿命を縮める原因にもなります。
骨密度の変化
骨は小児から思春期に成長し、20歳代に最大骨量を獲得します。その後、女性は閉経とともに急激に低下し、男性も加齢に伴って低下します。高齢期における骨粗鬆症、骨量減少の予防は、骨の成長期に最大骨量を高めておくこと、成人期以降は骨密度を維持し、減少を抑制することが重要です。
骨密度と食事
骨の健康のためには「カルシウム」が重要であることは広く知られていますが、体内に吸収されにくいため、カルシウムを効率よく摂取するための吸収を助ける栄養素が必要になります。例えば、カルシウムの吸収を促進する”ビタミンD”、骨へのカルシウムの取り込みを助ける”ビタミンK”です。
カルシウム
骨の主成分はカルシウムですが、体内のカルシウムは99%が骨と歯に含まれ、残り1%は血液などに含まれています。 骨のカルシウムは血液中のカルシウム濃度を一定に保つ働きをしています。血液中のカルシウムが不足すると骨のカルシウムは血液中に流出してしまうため、不足分は食べ物から補わなければなりません。
カルシウムが多く含まれる食品は、
・乳製品(牛乳、プロセスチーズ、ヨーグルトなど)
・大豆製品(木綿豆腐、厚揚げ、納豆など)
・魚介類(干しエビ、イワシの丸干し、ししゃもなど)
・野菜・海藻類(乾燥ひじき、干しわかめ、小松菜、青梗菜など)
*1日のカルシウム推奨量:成人男性/700~800㎎、成人女性/600~650㎎
ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進し、血液に入ったカルシウムを骨まで運ぶ働きがあります。ビタミンDをカラダに供給する方法は2つあります。1つ目は、食品から摂取することで、2つ目は、日光に当たることです。
ビタミンDが多く含まれる食品は、
・魚介類(鮭、サンマ、いわし丸干しなど)
・きのこ類(干ししいたけ、乾燥きくらげなど)
*1日のビタミンD推奨量:8.5μg/日(成人男女)
ビタミンK
ビタミンKは、骨の形成を促すたんぱく質「オステオカルシン」を活性化させ、カルシウムが骨に取り込まれて骨の形成を促したり、カルシウムが尿中に排泄されるのを抑え、骨の破壊を防ぐ役割があります。
ビタミンKが多く含まれる食品は、
・野菜類(紫蘇、モロヘイヤ、ほうれん草など)
・海藻類(わかめ、のり、乾燥ひじきなど)
・豆類(納豆、油揚げなど)
*1日のビタミK推奨量:150μg/日(成人男女)
カルシウムの吸収を阻害するもの
インスタント食品、スナック菓子などに多く含まれるリン、漬物や加工食品に多く含まれる食塩、喫煙、アルコールやカフェインなどの多量摂取は控えましょう。
カルシウムの吸収を阻害するものを取り除き、カルシウムを豊富に含む食品やカルシウムの吸収を助ける食品を積極的に摂取ししましょう。
骨粗鬆症と運動
骨粗鬆症の予防には栄養ももちろん大切ですが運動も大切です。ウォーキングやジョギングなどの荷重負荷がかかるトレーニングや筋力トレーニングにより、骨に直接刺激を与える方法が効果的です。骨にかかる力が大きく、また繰り返しが多いほど骨を強くすることがわかっています。
しかし、無理に激しい運動をする必要はありません。ウォーキングなどの軽い運動であっても継続することで効果が期待できます。
今は運動習慣がない方も軽い運動から少しずつ始めていきましょう。
(文/出野彩里)
<参考資料>
・臨床スポーツ医学 スポーツ栄養・食事ガイド Vol.26.2009
・パンフレット「整形外科シリーズ1 骨粗鬆症」
・厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2020年度版)
・厚生労働省.e-ヘルスネット
・公益財団法人 骨粗鬆症財団