成長期に筋トレはしてもいい?
成長期の子どもが筋トレをすると背が伸びなくなる、成長軟骨に悪い、そもそもケガを引き起こし危険だといった話を聞いたことがある方も多いかもしれません。果たして本当にそうでしょうか?筋トレはしないほうがいいのでしょうか?
今回は成長期の子どもの筋力トレーニングについてお話していきたいと思います。話を進める上で下記の2つについては以下のように定義をします。
成長期の子ども
・第二次性徴(女子が11歳、男子が13歳)以前の前思春期から思春期(12~18歳の女子、14~18歳の男子)にあたる対象者(おおよそ小学生から高校生をイメージしていただけたらいいかと思います)。
筋力トレーニング
・ダンベル、ウェイトマシン、メディシンボール、自重エクササイズなどの様々な負荷とトレーニング様式を用いて筋機能を強化、もしくは維持するために計画された専門的な方法。
成長期の子どもによる筋力トレーニングの危険性
成長期の子どもに限らずですが、筋力トレーニングは傷害の発生するリスクが全く無いとは言い切れません。しかし、それはスポーツ全てにおいて言えることであり、どんなスポーツやトレーニングであれ、ある程度の傷害の危険性は伴うものです。
むしろ、対人による傷害リスクがないことや影響を与える要因の少なさから、筋力トレーニングについては比較的傷害発生のリスクは小さいと考えますが、以下のことに気をつける必要があります。
- 適切なトレーニング技術
- 適切なプログラム
- 適切な漸進と適切な方法の選択
成長期の子どもはトレーニング技術が未熟なことが多く、身体的にも未熟なため、実施するプログラムや負荷等の増やし方、方法を適切に選択することが特に大切となります。そのため、サッカーや野球、水泳といったスポーツをコーチから技術や練習法を教わるように、筋力トレーニングについても専門の指導者から方法を教わる必要があります。
専門の指導者のもとで適切な技術を身につけ、適切なプログラムを漸進的に進めていくことができれば、障害のリスクを最小限にしつつ、筋力トレーニングの最大限の利益を得ることができるはずです。
筋力トレーニングによる子どもの成長阻害の可能性
結論から先に述べると、筋力トレーニングをすることで子どもの身長が伸びないということや、成長軟骨の傷害リスクを高めるというような、子どもの成長にマイナスの影響を与えることを示唆する証拠は報告されていません。
にもかかわらず上記のようなことが噂されるのは、実際に何らかのマイナスの影響があったからではないかかと思います。しかしそれらは先にも述べた、未熟なトレーニング技術、不適切なプログラムや実施方法が選択されたことが原因と考えられます。
筋力トレーニングをすることがマイナスの影響を与えているのではなく、適切なトレーニング技術とプログラム等の選択があったかどうかが結果を分けるのではないでしょうか。
成長期の子どもが筋力トレーニングで得られるメリット
成長期の子どもが適切な筋力トレーニングを実施することで、以下のような効果が期待できます。
- 筋力などの体力向上
- 骨の健康
- 運動スキルとスポーツパフォーマンスの向上
- スポーツ障害の予防
筋力トレーニングは適切に実施することで、スポーツをしている成長期の子どもに対してスポーツ障害の予防やパフォーマンス向上というメリットをもたらします。スポーツに取り組んでいない子どもに関しても、骨の健康や身体組成の変化など、健康面に対するメリットを享受することができます。
まとめ
筋力トレーニングは適切に行うことで安全に実施することができ、成長期の子どもが享受できる様々なメリットがあります。必ずやったほうがいいということではありませんが、傷害予防やパフォーマンスアップなどの一つの手段として筋力トレーニングを取り入れてみてもいいのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、筋力トレーニングを行う上で適切なトレーニング技術と適切なプログラム、適切な漸進と適切な方法の選択が前提となります。
成長期の子どもが筋力トレーニングを実施する際はトレーニング指導者のもとで指導を受けた上で実施することをおすすめします。もちろん、子どもに限らず大人に関しても同じことが言えますね。
(文/辻弦)
〈参考文献〉
青少年のレジスタンストレーニング:NSCAポジションステイトメント
Faigenbaum, Avery D ; Kraemer, William J ; Blimkie, Cameron J R ; Jeff reys, Ian ; Micheli, Lyle J ;Nitka, Mike ; Rowland, Thomas W