「むくみ」を撃退! 運動がカギを握る体の水の巡り方
「むくみ」は、多くの人が経験する身体のサインです。特に夕方になると、靴がきつくなったり、足首が太く感じたりしますよね。
医学的に言うと、むくみとは、細胞と細胞の間に水がたまり過ぎた状態のことです。私たちの身体の中を流れている血液やリンパ液という「身体の水」の巡りが悪くなり、あふれた水が組織の隙間に溜まってしまうことで起こります。
このむくみを解消・予防する最強の味方こそが「運動」です。運動がなぜ水の巡りを良くするのか、その仕組みを解説します。

むくみのメカニズム
身体がむくむのは、「水が出過ぎる」か「水が回収されない」かのどちらか、または両方が原因です。
長時間の同じ姿勢が「水たまり」を作る
私たちの血管の中には、水を外に押し出そうとする力(水の圧力)と、水を血管内に引き戻そうとする力(タンパク質の力)が働いています。
●重力の影響: 立ちっぱなしや座りっぱなしだと、重力で血液が脚に溜まります。すると、脚の血管内の水圧が高くなり、血管の外へ水がどんどん漏れ出して、むくみになります。
●塩分の摂りすぎ: 味の濃いものを食べすぎると、身体は塩分を薄めようとして水を溜め込みます。これもむくみにつながります。
「第二の心臓」がサボると水が戻らない
本来、脚に溜まった水を心臓に押し戻すポンプがあります。それが、ふくらはぎの筋肉です。
運動不足でこのポンプがうまく働かないと、水が脚にたまり続けてしまいます。
運動は「最強のポンプ」を動かすスイッチ
運動がむくみ解消に効果的なのは、科学的にも証明されています。運動は、血液とリンパ液の流れを強力にサポートする「身体のポンプ」を動かすスイッチです。
筋ポンプ作用
心臓から遠い脚の血液を重力に逆らって心臓に戻すには、心臓の力だけでは足りません。
ふくらはぎの筋肉が動くと、その周りにある静脈がギュッと押されます。血管には「弁(フタ)」が付いているので、押された血液は下に戻らず、心臓の方向へ一歩一歩押し上げられます。これが「筋ポンプ作用」と呼ばれる仕組みです。つまり、筋肉を動かすことこそが、むくみを解消する直接的な方法になります。
また血液だけでなく、老廃物を回収する「リンパ液」の流れも、主に筋肉の動きに頼っています。身体を動かしている時、リンパ液の流れは安静時の3倍から6倍に速まります。筋肉が動くたびにリンパ管も押され、スムーズに老廃物を流してくれるからです。
むくみ解消のためのお手軽運動
むくみ対策の運動では、ふくらはぎのポンプを意識して動かすことが大切です。
カーフレイズ
直接的にふくらはぎの筋ポンプを刺激するエクササイズです。

・壁などの前に立つ
・両脚を腰幅に広げ、つま先を前に向けておく
・まっすぐ踵を上げてつま先立ちになり、再びおろす
足趾運動
座ったままでも可能なエクササイズです。

・テニスボールを足の指で掴む
・指1本ずつに力を入れてしっかりと把持する
ウォーキング
リズミカルな歩行は、下肢の主要な筋肉群を順番に収縮させ、持続的な筋ポンプ作用を提供します。
また、有酸素運動は全身の血流と代謝を改善し、体温の上昇を通じて末梢血管を拡張させ、水分と老廃物の回収をサポートします。

また、深呼吸を伴うストレッチやヨガなどの運動もむくみの対策や予防に有効的です。全身の柔軟性を維持し、リンパ管の流れを改善するのに役立ちます。特に腹式呼吸は、胸腹部の圧変動を利用して深部のリンパ流を促進します。
要注意なむくみ
最終チェック:要注意な「病気のむくみ」
一時的なむくみは運動で改善が期待できますが、中には治療が必要な病気が原因のむくみもあります。以下のサインがあった場合は、すぐに病院で相談してください。
●片脚が急に腫れて痛い、赤くなっている。
●むくみが急に始まり、どんどんひどくなる。
●脚だけでなく、顔や全身がむくむようになってきた。
●むくみと一緒に息切れやだるさがひどくなってきた。
まとめ
むくみは、身体の「水の巡り」が悪くなっているサインです。その巡りを良くする最高のツールは、自身のふくらはぎの筋肉です。日々の生活の中で少しでも「動くこと」を意識して、「第二の心臓」をしっかり働かせましょう。
(文/小山七海)
<参考文献>
・Karaca, T., & Özen, Ş. (2021). Exercise and Lymphatic System. Journal of Exercise Therapy and Rehabilitation, 8(2), 117-124.
・Cancer Research UK. Exercise, positioning and lymphoedema.
・慶應義塾大学学術情報リポジトリ(KOARA).











