座位でできる簡単股関節ストレッチをご紹介します!
朝起きたときに腰や脚が重い、長時間座ったあとに立ち上がろうとすると股関節のあたりに硬さや痛みを感じたりしていませんか?

実はその不調、股関節の柔軟性の低下が原因かもしれません。股関節は、上半身と下半身をつなぐ大切な関節です。ここが硬くなると、腰痛や姿勢の悪化、さらには運動パフォーマンスの低下にもつながってしまいます。特にデスクワーク中心の生活や、加齢による筋力・柔軟性の低下がある方は注意が必要です。今回は、なぜ股関節の柔軟性が大切なのか、そして自宅で簡単にできるストレッチの方法を、わかりやすくご紹介します。毎日のセルフケアに取り入れて、しなやかで動きやすい体を手に入れましょう。
股関節とは
構造
股関節は、骨盤の寛骨臼と大腿骨(太ももの骨)の大腿骨頭によって構成される球関節で、身体の中で最も可動性の高い関節です。股関節にも関節包やいくつかの靱帯があり、股関節の安定性を保つために重要な役割を果たします。さらに股関節の運動の役割を担うたくさんの筋が存在しており股関節を構成しています。

主な運動方向と関係する筋
・屈曲(前に曲げる):腸腰筋、大腿直筋など
・伸展(後ろに伸ばす):大殿筋、ハムストリングスなど
・外転(外に開く):中殿筋、小殿筋など
・内転(内に閉じる):内転筋群(長内転筋、短内転筋、大内転筋など)
・外旋(外にひねる):梨状筋などの深層外旋六筋など
・内旋(内にひねる):中殿筋前部、大腿筋膜張筋など
代表的な疾患
・変形性股関節症:関節軟骨の摩耗により、痛みや可動域制限が生じます。股関節の安定性には臼蓋と大腿骨頭の位置関係によるところが大きく、変形性股関節症の発症は股関節のみではなく骨盤や脊柱のアライメントも深く関与します。
・大腿骨頸部骨折:高齢者に多く、転倒が原因で骨折することが多いです。骨癒合が得られにくい部位の一つとされており、治療方針は年齢や活動性などにて決定されます。
・梨状筋症候群:梨状筋と坐骨神経との間に生じる絞扼性(こやくせい)神経障害です。特徴的な画像所見に乏しいため診断・治療に難渋します。股関節運動に伴う坐骨神経の絞扼や、梨状筋の強い収縮あるいは長期にわたる緊張状態で生じると考えられています。
股関節の柔軟性はなぜ必要?
股関節は骨盤と大腿骨で形成されています。周囲の筋の柔軟性が低下すると、反り腰などの不良姿勢に繋がります。その影響で、腰痛や股関節痛など身体の痛みも出現します。
痛みの他にも股関節周囲の筋肉や関節包の柔軟性が低下し可動域が制限されると、これらの筋肉の活動量が減少し、筋力低下やバランス能力の低下が生じる可能性があります。これにより、歩行時の安定性が損なわれ、転倒のリスクが高まることがあります。
また、股関節は日常生活での、歩行、走行、階段の昇降、座位からの立ち上がりなど日常動作にも関与しています。股関節周囲の柔軟性が失われると、動きが制限されるだけではなく、他の関節や筋で動作を代償して負担がかかります。
椅子でできる股関節のストレッチ
日常生活では特に股関節屈曲位(座位のように股関節を曲げた状態)が多いため、伸展や外転、外旋方向の可動域が低下しやすい傾向にあります。その中でも特に股関節前面(腸腰筋や大腿直筋)が短縮しやすくなります。長時間の座位はこれらの筋が短縮位で保持されているため、柔軟性が低下しやすくなります。これらを意識的に動かすことが健康な股関節を維持するカギとなります。
ストレッチのコツと注意点
・息をしっかり吐く
・反動をつけずに対象の筋を伸ばしたところで30秒から1分キープする
ストレッチは「どこを伸ばしているか」を意識しながら行うことが大切です。テレビを見ながら、仕事の合間に、食後のリラックスタイムに…。気軽に取り入れられるのが椅子でのストレッチの大きなメリットです。
以下は、椅子に座ったまま股関節まわりの代表的な筋肉を安全に伸ばせるストレッチです。1日1回でも継続することで大きな違いが期待できます。
股関節前面

<方法>
・お尻の半分を椅子にのせる
・片方の足は後ろに伸ばす
*ポイント
・上体が前に倒れないようにする
股関節後面

<方法>
・椅子に座り、膝の上に足首をのせて4の字をつくる
・上体を前に倒す
*ポイント
・腰が丸まらないように上体を倒す
太もも裏

<方法>
・片膝は曲げて、片膝伸ばす
・上体を前に倒す
*ポイント
・膝を伸ばしている方の踵は天井に向けておく
・腰が丸まらないように
股関節内側

<方法>
・片足のみ横に広げる
・上体を前に倒す
*ポイント
・腰が丸まらないように上体を倒す
股関節の柔軟性は私たちの健康寿命や生活の質に大きく関係しています。特にデスクワークなど座りっぱなしの生活を送る方にとって、椅子に座りながら行えるストレッチは無理なく始められるセルフケアになります。
今日から椅子に座ったついでに、股関節のセルフケアをはじめてみてください。
(文/小山七海)
<参考文献>
・整形外科運動療法ナビゲーション-下肢-/整形外科リハビリテーション学会