2023-01-18

足がつるのはなぜ?

ふくらはぎあたりが急にぎゅっとなって、痛みが突如として発生するこの現象を何と言うかご存知ですか?
おそらく多くの方が一度は経験したことがあるであろう、”つる”ですね。”こむら返り”とも言い、医学用語では”有痛性筋痙攣(けいれん)”や”筋クランク”とも言います。特にふくらはぎがつるということが多いかと思います。

では、なぜつってしまうのでしょうか?
水分不足や電解質不足といったことは聞いたことがあります。これが問題である可能性もありますが、今回はそれらとは別の理由についてお伝えしたいと思います。

神経の異常活動が問題

実際につって痛みが生じているのは筋肉ではなく、筋肉を動かす司令を出している神経が問題とする考えがあります。

脳からの指令(電気信号)が脊髄の中枢神経を経由し、筋肉へとつながっている神経(いわゆる運動神経)に送られることで、筋肉が収縮し、私たちは身体を動かすことができています。この際に神経はどれくらいの力を出すか、どれくらいのスピードで動かすかなど、とても緻密に筋肉をコントロールしています。この神経自体の異常活動が起こると筋肉に異常な電気信号が送られてしまい、これがつるということを引き起こしていると考えられます。

なぜ神経の異常活動が引き起こされるのか

疲労や血行不良がこの神経の異常活動を引き起こしやすくすると考えられます。ただ、このメカニズム自体まだわかっていないことも多く、疲労の正体もはっきりしていないため、これが原因と明確には言うことはできません。

ただ、この疲労や血行不良を引き起こしやすくする原因としては筋肉量の減少や筋力の低下が挙げられます。

私たちの身体の筋肉は血流の循環を手助けする働きがあり、これを筋のポンプ作用と言います。これは筋肉が収縮した際に筋肉内の血管にある血液がギュッと押し出されるようなイメージです。特に足は心臓から距離があるため、血流が停滞しやすい傾向にありますが、この筋ポンプ作用によって、心臓へと血液を押し戻しています。

脚の筋肉量や筋力の低下はこの筋ポンプ作用を減弱してしまうことはもちろん、そもそもの筋肉自体が疲労しやすくなってしまうことが考えられます。

これらのことから、ふくらはぎの筋肉がつりやすいというのは合点がいくのではないでしょうか?

”つる”のを予防するためには

よくつった際の対処療法としてストレッチングが実施されます。つってしまった時の対処療法としては有効ですが、残念ながら予防効果があるとは言い切れません。

つるということは様々な要因が関与していると思われるため、何がその要因であるかを明らかにして、それに応じた対処をすることが重要です。

先程、筋肉量や筋力の低下から疲労し易い状態となり、神経の異常活動を引き起こしやすくしているのではないかということをお話しました。これに限って言えば、多くは活動量の不足が原因となっていることが多いと思います。特にふくらはぎについては歩く際によく使う筋肉です。日頃からよく使っておくことや、筋力トレーニングで鍛えておくことは遠回りに予防に繋がるのではないでしょうか?

(ふくらはぎの筋力トレーニングエクササイズはこちら

まとめ

つるというのは多くの場合で痛みを伴い、頻繁に発生したり、睡眠中に発生したりすると生活の質が下がりかねません。つることを予防するためにも運動は大切なことですね。

また、芍薬甘草湯や牛車腎気丸などの漢方薬、ピクルスジュースがつるのに対して効果があるかもしれないという報告もあります。ピクルスジュースはあまり美味しそうではありませんが…、興味のある方は試してみてもいいかもしれませんね。

(文/辻弦)

〈参考資料・文献〉

・大野政人.運動時に発生する筋痙攣の要因および予防法.明治学院大学教養教育センター紀要:カルチュール.2(1):37-42,2008.
・石田和之.Sleep-Related Leg Cramp に対する牛車腎気丸の有効性:有効症例の東洋医学的特徴についての検討.日東医誌 2014;65:100-107.
・K.C. Miller, G.W. Mack, K.L. Knight, J. Ty Hopkins, D.O. Draper, P.J. Fields, and I. Hunter, Med Sci Sports Exerc. 42:953-961, 2010.

web-reservation
関連記事