2026-01-28

「温活」ー運動と食事で体質改善ー

現代社会において、「冷え」は単なる不快感にとどまらず、多くの未病や疾患の背景にあることが明らかになっています。西洋医学では、体温が1°下がると免疫力が約30%低下し、逆に基礎体温が上がることで基礎代謝が約12〜13%向上すると言われています。

今回は、人体の熱産生の仕組みを解説した上で、「運動」と「食事」による具体的な温活アプローチを詳説します。

なぜ「冷え」は体に悪い?

人間の体は、重要な臓器が集まる深部体温を常に約37°前後に保とうとします。しかし、外気温の低下やストレス、生活習慣の乱れによって血流が滞ると、末梢(手足)から冷えが始まり、やがて内臓の温度も低下します。

免疫系・酵素活性への影響

私たちの体内では、数千種類の「酵素」が消化や代謝を担っています。これらの酵素が最も活性化するのは37°前後です。体温が下がると酵素反応が鈍くなり、細胞の修復やエネルギー産生が停滞します。また、白血球の活動も抑制されるため、感染症への抵抗力が弱まります。

自律神経の乱れ

冷えは自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを崩します。身体が冷えると交感神経が過度に緊張し、血管が収縮してさらに血行が悪くなるという「負のスパイラル」に陥ります。これを打破するのが、自律的な熱産生を促す「温活」です。

【運動編】筋肉は「最大の熱発生装置」

人体における熱産生の源泉は、大きく分けて「骨格筋」「肝臓」「褐色脂肪組織」の3つです。その中でも、私たちが意識的にコントロールでき、かつ全熱産生の約60〜70%を占めるのが「筋肉(骨格筋)」です。

① 下半身を標的にした「効率的熱産生」

全身の筋肉の約70%は下半身に集中しています。効率的に体温を上げるには、腕を鍛えるよりも脚を鍛える方が近道になります。

  • ・スクワット:太ももの「大腿四頭筋」は身体の中で最も大きな筋肉の一つです。ここを刺激することで、短時間で大量の熱が生まれます。
  • ・カーフレイズ:静脈還流の促進 「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉を動かすことで、足元に溜まった血液を心臓へ押し戻します。これにより、温かい血液が全身を巡るようになります。
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② 基礎代謝量を底上げする「無酸素運動」

筋肉量が増えると、運動していない安静時でもエネルギーを消費し、熱を発し続けることができます。これを「基礎代謝」と呼びます。加齢とともに冷えが深刻化するのは、この筋肉量の減少(サルコペニアの初期段階)が主な要因です。週に2〜3回の自重でのトレーニングは、長期的な温活において最も信頼できる投資です。

③ 褐色脂肪組織(BAT)の活性化

「脂肪」には、エネルギーを蓄える白色脂肪細胞だけでなく、「エネルギーを燃やして熱を作る」褐色脂肪細胞が存在します。これは肩甲骨周りや首筋に多く存在します。

  • アプローチ: 肩甲骨を寄せるようなストレッチや、腕を大きく回す運動を行うことで、この褐色脂肪細胞を刺激し、脂肪燃焼を伴う熱産生を促すことができます。

【食事編】食事誘発性熱産生(DIT)を最大化する

食べた後に身体が熱くなる現象を、医学用語で「食事誘発性熱産生(DIT: Diet Induced Thermogenesis)」と呼びます。これは消化・吸収の過程でエネルギーが消費され、熱として放出されるものです。

① たんぱく質を優先的に摂取する

摂取する栄養素の種類によって、DITの効率は劇的に異なります。

  • タンパク質: 摂取エネルギーの約30%が熱に変わる
  • 糖質: 摂取エネルギーの約6%が熱に変わる
  • 脂質: 摂取エネルギーの約4%が熱に変わる

この数値から分かる通り、高たんぱく質な食事は「食べるだけで温まる」食事と言えます。特に、1日の中で最も体温が低い「朝」にたんぱく質(卵、鶏肉、大豆製品など)を摂取することが、1日の体温リズムを整える鍵となります。

② 温活成分を科学的に選ぶ

特定の食品成分には、血管を拡張させたり、熱産生受容体を刺激したりする効果があります。

  • ・生姜(ショウガオール): 生の生姜に含まれる「ジンゲロール」は殺菌作用が強いですが、加熱・乾燥させることで「ショウガオール」に変化します。ショウガオールは深部から体温を上げ、持続させる効果があるため、温活には「蒸し生姜」や「加熱した生姜」が推奨されます。
  • ・カプサイシン(唐辛子): 交感神経を刺激し、アドレナリンの分泌を促して代謝を上げます。ただし、過剰摂取は胃腸への負担や発汗による気化熱での「冷え戻り」を招くため、適量が重要です。
  • ・ビタミンEとB群: ビタミンEは末梢血管を拡張させ、血行を改善します(アーモンドやカボチャに豊富)。ビタミンB1は糖質をエネルギー(熱)に変える際の潤滑油として不可欠です(豚肉や玄米に豊富)。

③ 精製された白い食品を控える

白い砂糖、白米、小麦粉などの精製された食品(「白」いもの)は、血糖値を急激に上昇させた後、急降下させます。この血糖値の乱高下は自律神経を乱し、血管の収縮を招いて冷えを助長します。可能な限り「茶色」い食品(玄米、全粒粉、てんさい糖、黒豆など)を選ぶのが、栄養学的な温活の基本です。

生活習慣のルール

運動と食事を組み合わせた上で、日常生活で意識すべきポイントをまとめます。

水分補給の温度

「水」は体温調節に重要ですが、冷水の飲み過ぎは胃腸を直接冷やし、内臓代謝を低下させます。常温、あるいは50℃~60℃程度の「白湯」を少しずつ飲むことで、内臓からじわじわと温めることができます。

腸内環境と体温

体温の維持には「腸」の健康も関わっています。免疫細胞の約70%は腸内に存在しており、腸内環境が悪化すると血流が悪くなり、代謝も落ちます。発酵食品(味噌、納豆、甘酒など)を積極的に摂ることは、DITを高めると同時に腸内フローラを整え、冷えにくい体質を作ります。

結論:温活は「生命力」を高める習慣!

「冷え」は体質だから仕方ないと諦める必要はありません。

  1. スクワットやカーフレイズで「熱を作る工場」を大きくする。
  2. 朝からたんぱく質を摂り、「DIT」をフル活用する。
  3. 加熱した生姜や根菜で「血流の質」を高める。

これらのアプローチは、単に「温まる」だけでなく、将来的な生活習慣病の予防、更年期症状の緩和、そしてメンタルヘルスの安定にも寄与します。

まずは明日、「朝食に卵を追加する」ことと、「歯磨き中に30回かかとを上下させる」ことから始めてみてください。わずか数週間の継続で、体内の「炉」は燃え始め、冷えに負けない健康な身体へと変化していくはずです。

(文/小山七海)

<参考文献>
・日本人の食事摂取基準(2020年版)/厚生労働省
・ぜんぶわかる人体解剖図(成美堂出版)/本間生夫 監修
・「体を温める」と病気は必ず治る(サンマーク出版)/石原結實 著

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